「寄り添って、寄り添って。寝ても覚めてもあの人のことを…」ヘアメイクKacoの挑戦

自らがメイクを手掛けるタレントは彼氏以上の存在になるらしい。

今を時めく若手俳優から大物芸人まで。男女問わず多くの著名人のヘアメイクを担当してきたKacoさん(32)曰く。

笑顔で淡々と熱く語るプロヘアメイクKacoさん

「最高級」の状態で舞台に送り出すのが彼女のシゴト。そこで求められるのは技術だけではない。出演者への気配り、「心を寄せる」ことこそが大切だという。

思い出すだけでも手汗をかく。

プロメイクデビューして間もない頃、女優の黒木メイサさんのメイクを担当した。誰もが知っている人。「誰もが知っている顔」に自らの手を施すのだ。このシゴトの「重さ」を感じた瞬間だった。

大物芸人ATさんとの出会い

それから経験を積む中で、チャンスが巡ってきた。

某大物芸能人ATさんのヘアメイクを担当していた先輩が結婚を機に大阪へ。ATさんの「東京」でのヘアメイク枠が空いたのだ。

またとない好機。しかし、「一度の失敗で終わってしまう」のがこの世界の厳しさ。一度、信頼を失うと次はもうない。だからATさんの初ヘアメイクまでに準備できることを全てした。

まずはネットでATさんの顔写真を検索。その中から「似合う髪形」と「似合わない髪形」を選別。「何が良くて、何が良くないのか」を徹底検証した。

次に頭の中でATさんのベストなヘアスタイルをイメージする。それを形にしていくのだが、いきなり本人に試すのは怖い。そこで彼女がとった行動は「ATさんに似た髪質の男性」を探し回ることだった。そう、「頭を借りた」のだ。

そこまでして作り上げた作品を写真に撮り、再び検証。納得のいくまでこれを繰り返して本番を迎えた。

ATさんは「こんな感じにして欲しい」というリクエストが一切ないらしい。

しかし、スタイリングが終わった後のその表情を見ると「何かハマってないな…。納得されていないのでは…」と勘づくことがある。それを敏感に受け取って、アジャストしていった。

寝ても覚めてもあの人のことを考えた。

そして、回を重ねるごとに信頼を勝ち取っていった。ついにATさんがKacoさんを「指名」してくれたのだ。「東京は(大阪は先輩)Kacoがいいかな」と。

仕事中は夢中になってやるので余計なことは考えない。しかし、自分がヘアメイクを担当した収録番組を家のテレビで見ることがある。その度に、「私、すごい人をやっているんだな…」とドキっとするらしい。

「現場」のKacoさん

キャバ嬢もやった。希望に満ちた下積み時代

高校時代、ダンスに励んでいたこともあり、「メイクのステージ映え」には強いこだわりがあった。大学卒業後、日本最大級の化粧品口コミサイト@cosmeで店舗スタッフ(化粧品美容部員)として3年間務めた。しかし、キャリアアップに伴い、メイク現場から遠のいていってしまう。このジレンマに悩まされた。「やっぱっり、私は現場にいたい。メイクがしたい」。美容部員として働きながら、メイクスクールに通った。そして手に職をつけ、ついに「プロのメイクの世界」に飛び込んだのだ。

最初から「ヘアメイク一本」で食べていくことは出来なかった。

ヨガのジムのバイトをしながらキャバ嬢のヘアセットもした。それだけでは生活が苦しく、自身もホステスやキャバ嬢もやった。最初の2年はそんな生活を送った。

この下積みがあっての今の華やかな世界なのだ。「辞めたい」と思ったことは一度もない。

「やりがいしかないんです。化粧品を見ているだけでワクワクするんです」。まさに天職だ。

Kacoさんの宝物・メイク道具

そんな「仕事一徹」のKacoさんとYouTube番組を始めることにした。

テーマは「男性メイク」だ。前述の通り、多くの男性メイクをしてきたKacoさんだから話せることがあるのではないかと思い、声をかけた。

「キレイになりたいのは女の子だけではない」。化粧品各社が「男性メイク」への事業拡大を模索するこのタイミングで、番組の立ち上げを決めた。

既にYouTubeではモデルなどが「メイク動画」を配信している。バズっているものも多い。しかし、Kacoさんは彼女たちとは違う。

「プロ」だから。「私はプロとして見られているということを自覚してしっかり魅せていきたい」と意気込む。

「感性も大事だけど理論的に説明するのがプロ。言葉の一つ一つを大切にして伝えていきたいです」。そう続けた。

そして最後に一言。

「日本中の男子たちをどんどん綺麗にしていきたいです」。

美に、ヘアメイクにどん欲なKacoさんに妥協はない。

もしかしたら、男性メイク市場を1mmくらいは動かすことになるかも知れない。

ニュース バズーカー編集長 庄野数馬