「キックマスターは島の校長先生」上船利徳氏に迫る ♯2

「元プロが教えるボールを遠くに蹴る方法」再生回数49万1800回越え(11/4現在)。前回の記事(10/28)で48万8000回とお伝えしたが、1週間でまた3800回も増えているじゃないか。

もうすぐ50万回再生。上船氏の神髄VTR。

伸びしろ、半端ない。

元プロサッカー選手・上船利徳氏(27)。職業「キックマスター」。

とにかく笑顔が素敵な上船氏。

文字通り「蹴ることに精通」いた人物だ。彼のYouTube番組がバズっている。しかし、「元プロ」というキーワードだけで、ここまでバズるのは何か臭う。

(彼の経歴に関しては次回お伝えする)

正直、大変恐縮ながらサッカー愛好家の私でもプロサッカー選手上船氏の存在は紹介されるまでは知らなかった。

全く悪いことではないが、広告費を払って多くの視聴者にリーチする方法もある。ビジネスとして先行投資することは定石の一つだ。

おそらくその辺りの手法を使ったのだろう。そう思って質問した。

「どうやってバズらせたのですか?」。

これに対して、驚きの即答。

「それが、何にもしてないんです」。

(嘘こけ)。内心そう思いながら目を見つめると彼は続けた。

「ただただ僕のキックが本物なので、皆さんが理解してくれただけだと思います」

。気持ちがいいほど自信満々な返答だった。それでいて嫌みを感じないのが好青年の証だ。

彼を疑うのは時間の無駄だ。本当に「口コミ」だけでここまで再生回数を伸ばしたようだ。そうない事例だ。

動画制作に関しては「知り合いのITに詳しい人」に任せているようだ。YouTubeというのは再生回数に応じてなど「広告収入を得る」もできる。お金のトラブルはよくない。念のために聞いてみた。

「YouTubeに広告機能がついていますが、収益についてはどうしているのですか」?

すると驚きの回答パート2。

「制作費として一部はその方(ITの人)に入るようにしていますが、それ以外は全部、僕の学校に入るようにしますので、私の取り分はありません」。

(ん?僕の学校?)

職業「キックマスター」、「サッカー指導界のバズーカー」としてインタビューに臨んだ。YouTubeでレッスンをする「今風の指導者」であって、まぁスポーツクラブで指導なんかをしているのだろうと思い込んでいたが私の想像は浅はかだった。

キックマスター・上船利徳氏の職業は、

「校長先生」。

しかも校長先生に就任した時の年齢は、

25歳。

もうこの人が面白くて、面白くてワケが分からなくなってきた。

校長先生なんです

名刺をもらった。

その肩書は、

「学校法人神村学園 上村学園高等部 エリート人材育成 淡路島学習センター長」。

学習センターのある通信制学校のセンター長、つまりは校長先生だったのだ。

サッカー好きの人なら高校サッカーの強豪、鹿児島の神村学園をご存じだろうがその分校のトップだったのだ。

サッカー部の監督なんです

そうなると想像がつくと思うが、彼は校長先生でありながら「サッカー部の監督」なのだ。

サッカー部監督・上船氏の指導風景。めちゃめちゃ気になる中央の方については次回ご説明する。

淡路島。兵庫県の離島、淡路海峡大橋を渡れば四国・徳島。大自然に包まれた島の中にある学校に彼が全国からセレクションした才能の塊を集め、エリートを育て全国制覇を目論んでいるという。

眩しい。

(これに関しても改めてじっくりご紹介する。まぁ彼の要素は多すぎます)

キックマスター始動

話をYouTubeに戻そう。

YouTubeをはじめたのは2019年6月だという。ついこの間のことだ。

2017年8月、翌年に開催を控えたロシアW杯にも出場した「ある日本代表選手」に「キック」の指導をしたことからはじまった。

世界を舞台に活躍する選手だ。そんなワールドクラスの選手にも「自分が教えることがまだあった」。彼は手ごたえとともに指導者として「一種の焦り」を感じた。

「日本サッカーのレベルアップのためにも、僕が今すぐ動かなければならない」。

そこで開催したのがYouTubeのチャンネル名でもある「キックマスター講座」だった。いきなり動画投稿をしたのではなく、まずは「現場」からだった。「サッカー人脈」をフル活用して関東圏は全て、それから静岡、愛知、兵庫、大阪、広島、鹿児島など全国に足を運び、その地域の少年少女たちに「正しいキック」の方法を伝授していったのだ。

子供たちの前でお手本を見せる上船氏。美しいフォームだ。

その都度、知人に「今、僕がこの講座をしなければならないんだ」とプレゼンをして、旅費、宿泊費をサポートしてもらった。10人しか集まらないところにもキックマスターは出向した。これが口コミで広がり、各地に生徒は殺到。一度に看られる数は150人程度。それを何コマにも分け、朝の9時から夜の9時まで。上船氏の休憩は昼の1時間だけ。それを3日連続でこなしたこともあった。

指導者にも気力と体力が必要だ。これだけの長時間を指導するとなると、どうしても最初と最後で指導のクオリティ、モチベーションの差が出てしまうものだ。それが彼の場合は皆無だった。朝9時に来る子も、夜7時に来る子も同じように楽しみにしてくれている。子供たちにとっても貴重なトレーニングの時間を自分に使ってくれることが「有難くて、嬉しくて」。疲れたとか手を抜いて指導するといった心境には全く至らなかった。気がつけば1日が終わっていた。子供たちの笑顔、そして心地よい疲労が彼にとっても明日への糧となっていた。

キックマスターの悩み

しかし、前述のとおり、彼は25歳の若さで「校長先生」になった。さらにサッカー部の監督。休日は遠征。二足も三足ものわらじを履く男にゆとりがなくなってきた。

開校式には漫画「キャプテン翼」の作者、あの高橋陽一先生がお祝いに駆け付けた。

もうこれ以上、キックマスター講座に割く時間が作れない。

それでもこの活動は絶やしたくない。

そこでひらめいたのが「YouTubeレッスン」というアイデアだった。

動画なら、効率的に指導ができる。場所も選ばない。「よし、やろう」。行動は早かった。

そして目的はあくまでも「日本サッカーの競技力向上」。YouTubeで儲けようという考えは1ミリもなかった。

「確かな理論」が口コミで浸透し、YouTube再生回数は鰻上り。それに伴い、彼の知名度も向上した。今ではチームの遠征先、試合会場のグラウンドで子供たちに「あ!キックマスターだ!」と声をかけられるようになった。「照れくさいですけど、嬉しいですね。笑」。彼自身が広告塔になって「キック技術向上」を啓発しているのだ。

キックマスターの伸びしろ

しかしそれにしても、ここまでの反響を予想していたのだろうか。

聞いてみると…

「これくらい(再生回数が伸びること)は予想していましたし、もっと行けると思っています。本物のキック指導をしている自信があるので、サッカー人口からすると、チャンネル登録者数10万人は簡単に行くと思っています」。

上船節だ。

また、彼がバズり出して「DVDを作らないか?」などの提案を複数受けたらしいが、「一人でも多くの人に伝えたい」という思いから「無料」で見られるYouTubeを選択したことも分かった。

「普通は有料でも見たいと思われている内容だと、認めてもらっていますし、それを無料で見られるので、もっともっと増えると思います」。

さらに熱弁は続く。「本気で上手くなりたい人に、一度見てもらえたら、継続して見てもらえると思います」。「本気」の彼には「本気」の生徒(視聴者)が集まってくるだろう。

現在の彼のYouTubeチャンネル登録者数は2万1800人越え。10万人は簡単に超えると話していたが、果たしてどこまでを目指すのかを聞いてみた。

「目標数値というか、日本サッカー向上の為にも、100万人は行かなければいけないかなと思っています」。100万人。しかし、もう彼が何を言っても驚かないし、たぶんそうなるんだろうと思えてしまう。

彼のアクションが選手のレベル向上に貢献し、しいては本当に日本サッカーレベル向上に繋がるかもしれない。これからも彼の動きをマークし続けていきたい。

次回、そもそも、なぜ彼は若くにして校長先生になったのか。

「上船徳氏のサッカー人生」を振り返る。

ニュース バズーカー編集長 庄野数馬